弘山勉のブログ
ランニング動作において“連動”や“協調”は最も大切である でも、それってどういうこと?
投稿日: 2017年 1月 4日 水曜日
皆様、新年明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願い致します。
新年の始まり、毎年恒例の駅伝三昧の3日間。ニューイヤー駅伝と箱根駅伝が終わりました。とくに、箱根駅伝は、早くあの舞台に立ちたいと強く思います。
詳細な分析は、各監督・コーチと選手にしかできませんので、多くを語ることはできませんが、私は常に、各選手の“動き(フォーム)”を注視しています。この走りならば、「向かい風にも強いだろう」「それだけ力んで走ったら後半はもたないだろう」「上手く腕を振れば、もっと速く走れるのになあ」とか、考えながら観てしまいますが、もはや癖かもしれません(笑)。今年のニューイヤー駅伝は、風があまり強く吹かずに、動きによる適性や偏った(特別な)能力というより単純に走力と調子で決まった結果なのかも、と感じました。
駅伝の中継を観て思うことは、「動きが良い選手が少ない」ということです。パーツの動きは良い人でも、全体的にしっくりこない感じが強かったりします。何なのかと考えたときに、「連動性や協調性に乏しい」ということが頭に浮かびました。
ランニングは、自分の身体を運ぶスポーツで、その運ぶ速さを競う競走になります。そのために、身体を鍛えるわけですが、効率の良いフォームを追求することがとても大切です。鍛えた体力を地面に伝えるのは動き(走技術)ですから、技術も重要な体力要素となるので、パフォーマンスを上げたいのであれば、こだわっていったほうがよいと思います。
こういったことは再三書いてきましたが、効率の良いフォームを考える上で、また違う観点から、少し書いていきたいと思います。詳しい知識を持つ、近野コーチや山田コーチにも手伝ってもらうことも考えていきます。
フォームはいろんな意味でとても大切です。
・速く走るため
・スピードを持続させるため
・長く走り続けるため
※故障しないため
・余分な疲労を残さないため
その中で最も重要なのが「故障しにくい」ということ。トレーニングを継続できない限り、身体能力や機能向上は期待できませんから、故障が多い選手が強くなっていかないのは当たり前です。筑波大学の学生を指導していても、EVOLU(エボーリュ)RCの会員の方でも、故障で伸び悩んでいるケースがけっこう見られます。
そうならないためのヒントになればと思い、少し違った要素を盛り込んで、(できれば)シリーズで書いていきたいと思います。
前置きが長くなりました・・
さて、ランニングは全身運動と言われます。しかし、長距離走者(ランナー)が意識するのは、「腕振り」や「接地の仕方」「地面の蹴り方」「母指球に乗せる」など、身体の末端部分ばかりではないでしょうか。
さらには、「つま先接地が良い」とか「重心の真下に接地するのが良い」「骨盤の前傾が良い」「前傾姿勢が良い」などの言葉が飛び交います。これは、正しい解釈のもとで実践しないと(誤った理解をすると)故障を招く危険なアドバイスになるので、注意が必要です。
ブログを書き始めた最初の頃に書きましたが、身体の末端を意識するのは、最後でいいのかもしれませんが、もちろん身体の末端であれど、重要な役割を担います。中心を動かすために末端を動かすということも正しいと言えます。
しかし、それが正しくなるのは、意識するのが身体の中心付近だろうが末端だろうが、全体として上手く「連動していること」と「協調していること」が大前提となるわけです。
つまりは、動きの意識とは、あくまで全身の連動と協調のための意識であるべきです。どこを意識しようが、全体として連動や協調が上手くいっていればいいわけです。しかし、実際は、そこまでの意識している人は少ないでしょう。
そう考えた場合、意識は人ぞれぞれで良く、何も、人と同じ意識を持つ必要はないことになります。各個人で動き(フォーム)に対する課題は当然ながら違いますからね。4スタンス理論というものもあるように。
一方で、理論的に正しい動きは間違いなく存在します。そこを目指すことは決してマイナスにはならないのですが、大切なことは、その理論を正しく理解し、感覚として掴んで実行することです。その感覚を具現化するための意識をどこに持つのか? そこがポイントです。何をどう意識して、課題克服のために何を実践するか、にかかっていると思います。
『ランニングにおける連動と協調』と題してシリーズで書いていきたいと思っていますが(あくまで予定)、まずは、今回、連動と協調とは何かを書きたいと思います。
■連動
意味を検索してみると、「続きに働かせる機械の間の運動が統一的に行われるように、連結してあること」「そのある部分を動かすことによって、他の部分も統一的に動くこと」とあります。
まさしく、人間の運動もそうあるべきです。
ランニングは、地面を押して反力で進んでいきます(作用・反作用)。つまりは、「作用点である足にどう力を伝えるか」「足から得た地面反力を身体にどう伝えるか」にかかっています。短距離でも長距離でも、その点は同じです。しかし、求められる速度や走る距離が違うので、動き(力)の割合や配分を変える必要が出てきます。
各筋肉や骨、関節の動きの割合や力配分を「バランス良く」「統一的に」連携して動かすことが連動になるのではないでしょうか。次回以降に書いていこうと思っていますが、例を挙げると、膝関節の角度が何度で接地して、どれくらいの力をどこ(骨)に加えると効率よく連動する骨に力を加えることができるか?ということ。
その時に、股関節の角度は何度? 胴体の角度は? 頭の位置は? など全てが理にかなった数値で全体として統一されて瞬時に変化しているかどうかということです。これは個人差があります。骨格や骨の長さが違うのですから、同じにはなりえません。
連動を考える上で、基本的な概念を知る必要があります。それは、筋肉と骨と関節の関係です。
・筋肉が骨を動かして、関節が3次元で動き変化します
・その関節の働きで、骨の動きが決まってきます
上記の通り、「骨⇔関節」は、互いに影響し合います。骨が動いて関節の角度が変わるわけですが、関節の動きで連動する骨の動きが決まってくるのです。こう書けば、わかっていただけるでしょうか。少し難しいでしょうか。
つまり、連動は、骨⇒関節⇒次の骨⇒次の関節⇒次の次の骨⇒次の次の関節 という関節と骨の動きの連動であり、力の伝達なのです。筋肉はあくまで骨と関節を動かす役目を果たします。
多くの方が、「筋肉で走る」と考えるでしょうが、「骨で走る」という感覚を持てるかどうか、そこがポイントになるような気がしています。
■協調
意味を検索してみると、「利害の対立した者同士が、おだやかに問題を解決しようとすること」「性格・考え方などの異なった者同士が、互いに譲り合って調和していこうとすること」「互いに協力し合うこと」とあります。
協調という言葉の意味を検索してみて、あらためて面白いと感じました。筋肉や関節は協調しないと、まさしく利害の対立関係になってしまうからです。
以前に書きましたが、一つ例に出すと、「腰に力を入れてしまうと脚が前に出にくい」という具合に。人間が持つ本来の動きをするためには、主張すべき筋肉と譲る筋肉、緊張する筋肉とリラックスする筋肉が必要です。
それを無視して、主張してはいけない筋肉が主張しては、正常な動きの妨げになるわけです。協調や調和という観点では、「主張してはいけない局面で主張しないこと=リラックス」を覚えることが重要なポイントになるような気がします。力を抜くことは、ほんとうに難しいからです。
ランニングの場合、支持脚は、作用点に対して、支点となる関節をどう動かして、そこに加える力の配分を瞬時に変えていくことになります。その支点は、多数存在します。脚・腰を動かすために、同時に協調して上半身も使います。
これらについて、次回以降に具体的に説明していきたいと思うわけですが、私の経験値の中で書いていきますので、果たして上手く(正しく)書けるかどうか・・・(笑)。
おかしいと思ったら、遠慮なく“突っ込み”を入れていただければ幸いです。
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