弘山勉のブログ
【基本シリーズ】走るとき 地面は「押すの?」「蹴るの?」
投稿日: 2014年 11月 26日 水曜日
前回、接地を意識して走った場合の他への影響について、書かせていただきました。今回は、その話に少し通じるテーマにしたいと思います。
『地面を押して走るの?』それとも『地面は蹴って走るの?』について、私なりの見解を述べたいと思います。
これも議論が分かれるテーマです。
レッスンなどの場面で『地面を押す』という表現を使うと「走るのに、押すって感覚がわかりません」と言う方(アスリートも含めて)、実はひじょうに多いんです。
そう感じるのは、無理もないことだと思います。『押す』って、力を加えることで、重いものを動かすイメージがありますからね。
でも、考えてみてください。人間の身体って重いですよ。
その『重い身体を運ぶ運動』がランニングや歩行になります。知らず知らずに地面を押しているわけです。写真は、弘山晴美の走りで一番膝が屈曲した場面のものです。「さあ!押すぞ!」というふうに見えませんか?(笑)
一言で押すと言っても、方法は色々あります。わかりやすく説明できるかわかりませんが、努力してみますので、最後までお読み下さい!
まず最初に、質問から入ります。
今、目の前に、レールに乗った貨物車があるとします。あなたは、この貨物車を押して動かさなければなりません。さて、あなたは、どう押しますか?両手と片手で、どちらでもいいです。
砲丸投げが腕を使った場合の例はいいのですが、ほとんどの方、経験ないですよね。何かを前に押すことは、誰でも経験あることですから、自分が貨物車を押す姿を簡単に思い浮かべることができるはずです。
では、次に、身体を使って押すとは、どういうことかを理解してもらうために、制約条件を出します。
『両足を水平に揃えて足場を固定して押す』ことをイメージしてください。
ほとんどの方が、腕を曲げて貨物車に手を掛けると思います。なぜならば、脚を使えない以上は、腕で押そうとするからです。つまり、曲げた腕を伸ばすことで押せることを知っているわけです。(走るときに膝を曲げて接地するのもこれと同じです)
しかし、大事なのは、ここからです。貨物車がどれだけ動くかは、腕の伸ばし方によって違ってきます。
代表的な二つの例を挙げます。
①曲げた肘を伸ばす
自分の身体が動かなければ、結果的に貨物車を押すことになります。パワーとスピードがあれば、一瞬で押すことができます。ただし、肩も手首も固定しておく必要があります。つまり、手のひらで押すか指先で押すかを先に決めていなければなりません。
②肩から動かして腕の筋肉を使って手のひらに力を加えていく(順番に力を伝える)
結果的に肘が伸びるのですが、最後に指先まで使って押すことができます。
①は、『つま先接地』に多い身体の使い方です。
(ベタ足で膝を伸ばしても上方向寄りにしか動きません。だから、踵を浮かせて前方への推進力を生み出します)
足首と股関節を固定して、筋肉を使って膝を伸ばします。地面は動きませんから、素早く身体が浮き上がります。足首を緊張させているので、地面を蹴っているような感覚になりがちです。
この使い方は、かなりのテクニックが必要となります。出している膝を引いても結果的に身体は持ち上がるのですが、力が後方に逃がしてしまうことになります。
②は踵から接地していくタイプに多い身体の使い方です。
体幹から筋肉を使い足先に向かって順番に力を伝えていきます。時間をかけて押すので、一瞬のパワーは必要ありません。地面を長い時間をかけて押せるので、長距離向きの走り方と言えます。足先まで使えるので、蹴る感覚が強く残ります。
ただし、課題は、最後に足首で調整(帳尻を合わ)してしまえるところと膝を伸ばし切らなくても進めるところです。どちらの場合も推進力という点で大きな減点になります。
皆さんは、どちらのタイプですか?
①と②で分けて説明しましたが、速く走ろうとすると①と②の両方の使い方が求められます。これを説明するのは、難しいですし、長くなりましたので、続きは、次回とさせていただきます。
いづれにしろ、『蹴って走る』という感覚は、あくまでも、走りの最後に残る残像に近い感覚でしかないと言えるでしょう。私はそう思います。
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