EVOLUランニングクラブ

弘山勉のブログ

【基本シリーズ】速く走るためには『骨盤は前傾』させるの?

投稿日: 2015年 2月 20日 金曜日

今回は、ランナーの間で流行り?の『骨盤の前傾』について、私なりの見解を述べたいと思います。

まず最初に、骨盤に関する雑学から

地面を押すことで前に進むランニング動作では、かなり重要なのが腰部の動きだと思っています。腰と言っても概念は人によって様々です。例えば、速く走る(歩く)ために、「腰をローリング」「股関節を使う」「骨盤を動かす」と表現は人それぞれ違いますね。

私は昔、腰というと「腰椎」辺り、股関節は「脚の付け根の前」部分と切り離して考えていましたし、骨盤まで含めたイメージを持つことはできませんでした。大学で学びましたが、陸上競技の指導者になって動きの指導をするようになって初めて、正しい概念がわかったと思っています。

骨盤は、「寛骨(腸骨・恥骨)」「仙骨」などの骨とそれらを結びつける「腰仙関節」と「仙腸関節」など全体を指して言っていると私は理解しています。(図を参照)

骨盤イメージ図

ランニングで重要となるのは、主に“寛骨”の動き。前後左右上下に動かしながら3次元に回旋させて、股関節を通して、大腿骨に力を伝えていきます。「仙骨・寛骨」⇒「大腿骨」という“力の伝達”/「腰仙・仙腸関節」⇒「股関節」という“動きの伝達”です。図を見て、何となくイメージできませんかね?

もう少し詳しく説明すると、股関節(大腿骨)へは屈曲・伸展・外転・内転・外旋・内旋という動きを伝えるわけですが、なんと22種類もの筋肉が働くのです。人間の身体って凄いなあと思います。

ちょっと前置きが長くなりましたが、骨盤の仕組みを理解していただかないと私の言いたいことが伝わらないと思いますので、ご了承を。ここからが本題です。

よく「骨盤を立てろ」とか「骨盤を前傾させろ」と耳にします。決して間違いではないのですが、骨盤を立てる・前傾させる動作局面は、骨盤の運動の一部分でしかありません。ずっと意識していらっしゃる方がいますが、あまりお勧めしません。パフォーマンスにも影響しますし、腰部へのストレスは増大して故障の原因になってしまうからです。

メリットとしては、前傾するときは通常、身体が骨盤の上(=つまり大腿骨の上)にあるので、身体を乗り込ませるときに、重心の遅れがなく、地面をすぐに押すことができるところです。ただし、腰に力を入れ過ぎてしまう場合が多く、意外やお尻に力が入りにくいので、腰を反る人は地面を押す力は弱いと言えると思います。

骨盤を前傾させ続けることのデメリットは、けっこう大きいと思いますね。脚が出にくいし、膝も上がりにくいです(=脚を上げるときは、骨盤は後傾ぎみになるはずです)。

例えば、大腰筋に力が入ったままですから、大腿骨は後ろに引っ張られた状態が続きます。ですから、大腿骨を後ろに移動させることは簡単なので、地面を押しやすいとは思います。でも、逆は厳しいですね。「骨盤を前傾して膝を上げろ」なんて無理難題は、指導される方は言わないほうがいいでしょう。

腸腰筋イメージ図

デメリットは、他にもあります。前傾させるために、主に腰の筋肉を緊張し続ける必要があります。つまりは、腰仙関節や仙腸関節が働きにくくなります。本来動かなければいけない関節を動かないように固定してしまうのですから、このストレスは相当に大きなものとなります。その証拠に、仙骨の疲労骨折をする選手もいるほどです。

また、骨盤(寛骨)が動かないので、股関節と恥骨への負荷も相当高まります。具体的に言うと、恥骨が半分で折れ曲がるようにストレスが加わるのではと推測します。腰をぐっと反って走る女性ランナーに恥骨の疲労骨折が多いのはそのためではないでしょうか。

腰部ストレス

パフォーマンスにも影響します。骨盤が動かないと地面を長い時間(距離)捕まえる(捉える)ことができないので、かなりの不利になるのは想像がつくでしょう。ピッチ走法で骨盤が働かない分を補う必要があると思いますが、脚を運ぶという動作になりがちなので、力んだままになり、疲労しやすいと思いますね。

骨盤を動かすためには、お腹と背中の筋肉を前後左右で上手に使いわける必要があります。力を入れることと抜くことを同時に繰り返していかなければなりません(説明するのは難しいので、ここでは省きます)。それをするために、肩(肩甲骨)の動きを連動させるわけです。「ランニングは全身運動である」と言われる理由の一つです。

ランニングは、骨を動かして進むわけですが、主導筋と拮抗筋がバランス良く相互作用しなければなりません。腰に力を入れた(骨盤を前傾した)ままでは、それらが上手く働くことがないことを理解してほしいと思います。