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弘山勉のブログ

中長距離ランナーが「スピードをつける」って何をすればいい?

投稿日: 2015年 3月 19日 木曜日

前回、自己分析の仕方や強化計画の立て方について、少し記述しましたので、今回は春シーズンに向けて相応しい内容で書いてみたいと思います。

秋以降に駅伝やマラソンが盛んに行われることを考えると、春~夏のシーズンは、スピード能力を高める時期に当てるべきだと思います。まさしく、今からです!

一つの理由に、気温が関係します。寒い時期に極限のスピードを出して走ることは、怪我の発症率が高くなります。

筋温が低下しやすいのと、路面やシューズの硬度も高くなるからです。筋肉が動きにくい上に、衝撃が強い状況で速く走るのはリスクが大き過ぎますよね。この前にシーズンという考え方を示したのは、そういう意味があります。

「スピードをつける」「スピードが出るようにする」って、単にスピード練習をすれば身に付くと思っていませんか?

スピード練習をすればスピード能力が高まるのは、練習内容にもよりますが、効果は、3~4割程度と思ったほうがいいでしょう。「スピード練習をしてスピードランナーに変身できる人は限られる」という言い方でもいいのかもしれません。

私が考えるポイントをいくつか示します

①動きの調和(連動、連携)
やっぱりフォーム(動き)が何よりも重要です。通常は、屈曲している(縮む)状態から伸展させていく(伸びる)ことで地面に力を伝えていきます。この動作を左右で同時並行で別々に繰り返していくのがランニングです。

例えば、右脚で地面を押しきる場面を思い浮かべてください。右側は、体幹の背面は縮み、体幹の前面は伸び、股関節は伸展し(ちょっと違うのですが、この表現がわかりやすいので)、右膝は伸展し、足首は底屈します。

では、逆の左側はどうでしょう。体幹の背面は伸び、体幹の前面は縮み、股関節は屈曲し、左膝は屈曲し、足首は背屈します。

nakamura_1

この動作をするために腕がとても重要な役割を果たします。

こうした動作が緊張と弛緩を繰り返してできるようになると地面に効率よく力を伝えることができます。どういうことかと言うと、地面を最後まで押すことができるし、脚は前に出やすくなります。結果としてストライドが伸びます

同じ力を使って走ったとして、ストライドが伸びれば、速く走れる可能性が高まります(ピッチが速くなれば)。まずは、正しい動きを身に付けることがスピードランナーに変身するための一番の近道となるのは、わかっていただけるはずです。

②重心位置
上記の動きを意識した上で、姿勢を良くし、重心位置を高めることで、遊脚(地面を押してから接地するまでの間)の力が抜きやすくなります。前のブログで書いた通り、リラックスして速く動かせるわけです。

また、重心位置を前方に持っていくだけで、接地点が前になり、より長い間、地面を捕まえることができるようになります。長い間、地面を捕まえられると、一瞬で力を加えなくていいので、スピード持続力は飛躍的に高まります。

③軸足(地面を押している脚)
軸足に身体がしっかりと乗っているかがとても重要です。お尻の筋肉と内転筋、前脛骨筋を緊張させて股関節に身体を乗せることが求められます。横に力を逃がすことなく地面に真っ直ぐ力を伝えることができるかどうか、ここが重要なポイントだと思います。

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④スピード走練習
①~③ができる状態、つまり、ストライドが自然と伸びた状態でスピード練習を行うとどんどん速く走れるようになります。イメージとしては、伸びたストライドを維持してピッチを上げるトレーニングというもの。

全身の調和がとれる(正しい使い方ができる)ようになると、そういうイメージが現実的になってきます。筋肉の能力は鍛えるほどに高まっていくはずです。

バラバラに動かしたり、関節が正しい動きをしなかったり、ずっと力んで(緊張して)いたりすると、筋肉の能力は偏った高まり方をしてしまうものです。一生懸命に走ることが速く走ることではないことを覚えてほしいと思います。

ですから、やみくもに速いペース設定をして、力んでガチガチになったら逆効果です。力む練習をしているようなものです。それをスピード練習とは言わないでしょう。

スピード走練習とは、速く走るための動きを実践する場であり、正しい動きを速く行えるようにして、それを持続できるようにするトレーニングです。動きによって、LTやOBLAといった能力指数にも差が出るのは理解していただけるはずです。

⑤トレーニングを構成する要素の選択
ウェイトトレーニングでも反復回数と重さで筋肉が獲得する体力は違ってきます。スピード走練習も同じです。何の体力向上を狙った練習なのかを明確にして実施する必要があります。

人に合わせて行うものではないというのが私の持論ですが、一人で行うのは厳しいトレーニングなので、難しいところです。

動きが崩れないように注意しながら、段階的に強度や量(距離や反復回数)、休息時間のレベルを上げていくべきだと考えます。

スピード練習構成要素

その他、余裕があれば

⑥起伏走(パワーアップとフォーム改善)、⑦全身協調性のパワートレーニング、⑧ジャンプ系トレーニング、などを取り入れるといいでしょう。

スピード能力を高めたい方は、①~③の基本動作を習得してください。その上に④からが上乗せされるという認識を持つことです。(⑥~⑧は、①~③を高めるトレーニングでもあります)

①~⑧のポイントを挙げましたが、実際に行うトレーニングには様々な種類とかたちがあります。
そこが指導者の腕の見せどころですし、選手(ランナー)自身も考えるべきところです。

何のトレーニングをするか? 何と何のトレーニングを組み合わせるか? 強度は? 量は? 頻度は? 考えると楽しくなります。

人それぞれ違うのですから、「考えること」、そして、「試すこと」、それから、「工夫すること」、です。

いよいよ春です。スピードを高めるチャンス到来です!競技に春が訪れるかどうかは、春シーズンの使い方が重要です。

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