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弘山勉のブログ

逆算のトレーニングで記録を伸ばす

投稿日: 2015年 4月 3日 金曜日

前回は、スピード走練習について、私なりの考え方を書きましたが、今回は、トレーニングの組立て方について、一つの例を説明したいと思います。

基本的な考え方には、二通りあります。

①スタミナをつけてスピード持続力を養成する

酸素摂取量を高め、グリコーゲン貯蔵量を増やし、脂肪の利用率を高めるなど、先に「動き続けることができる身体」を作ります。その上で、スピード走練習という負荷を与えていきます。

利点としては、バテない身体がベースにあるので、きっちり練習をこなすことができるところ。確実性を採るならば、このやり方は有効でしょう。ただし、速筋と遅筋の中間にあたる筋肉がスタミナ寄りの能力を身につけてしまっているので、それを速筋寄りに変えるのは容易ではありません

②スピードをつけてスピード持続力を養成する

スピード走能力を高めてから、身体に持続力をつけていきます。高めたスピードを持続させるイメージです。

利点としては、ペースが遅くなる長い距離では余裕度が生まれるので、高いスピードレベルで練習を考えられることです。難点は、練習量を増やすには、段階的なレベルアップが必要になることです。量と強度のさじ加減は、けっこう難しくなるでしょう。

高い目標を掲げて、それに向かって強化する場合は、②の考え方で進めていったほうが良いと思います。ただし、体力ベースが低い選手は、①の考え方で強化をしていくことも必要だったります。

①と②のどちらかを採択するためには、トレーニングの特性を知ることが重要です。極端な話しをすると、「有酸素運動」と「無酸素運動」は、対極のトレーニングです。つまり、スピードとスタミナを同時に高めることは不可能だと思ってください。

逆算のトレーニング_2

例えば、有酸素運動を続けると、身体は経済的(中間筋が遅筋寄りに・エネルギー代謝系など)な方向へシフトしていきます。当然、爆発的なスピード(乳酸を多量に発生させるような負荷)を出せなくなります。

また、フォームにも影響します。長い距離や時間を走ってばかりいると、協調性に乏しい、重心の低い、小さな動きになってしまいます。スピードを出せないランニングフォームになっていってしまうわけです。

スピードが出せなくなると、すぐに記録の伸び悩みがやってきます。つまり、レベルアップがされにくい状態になります。

記録が伸び悩むと、「練習量を増やして強化しなければ」と考えがちになり、悪循環への道を歩むこと必至です。

冬場の長距離シーズンで陥った上記の状態を脱するのが春から夏のシーズン。記録の伸びを生みやすい「スピードが出せる身体やフォーム」を獲得すべき時期なのです。
ただし、やみくもにスピードを高めようとするのはナンセンス。どこまでのスピードレベルで何メートル走れるようにするかを決めておくべきです。そのために導入するのが、逆算の強化計画です。

逆算のトレーニング

1万mを例にすると、私の経験上では、男子選手は「5000mのタイム×2+50秒」、女子選手は「5000mのタイム×2+1分」という計算式を当てはめることができると思います。(もちろん、その人の身体各能力で計算式は違います)

具体的に言うと、女性の場合、5000mを15分30秒で走ることができる選手は、32分で1万mを走破できるはずです(15分30秒×2:31分+1分=32分)。つまりは、15分30秒で走れるトレーニングを積んで、スピードの余裕度を高めることで、1万mの目標を楽にクリアしようとする考え方です。

最初から1万mの練習をしてしまうと、意外に目標へは届かないと感じています。

マラソンの目標記録を設定して1万mの目標記録を逆算
1万mの目標記録を設定して5000mの目標記録を逆算
5000mの目標記録を設定して3000mの目標記録を逆算
3000mの目標記録を設定して1500mの目標記録を逆算

例えば、マラソンの日本陸連設定記録から逆算していくと(長年携わった女子が計算しやすい:笑)

(女性)2時間22分30秒⇒31分30秒⇒15分15秒⇒8分55秒⇒4分12秒

という具合に、どの種目(距離)を目標にして、どこまで遡る(逆算する)かでしょう。遡った種目から強化を開始して、最終目標の種目で勝負するのが逆算のトレーニングと言うわけです。

逆算のトレーニング_1

この逆算のトレーニングを毎年レベルアップして実行できると、どんどんパフォーマンスは向上していくはず。これらを数年のスパンで長期計画を立てることが高いステージに登りつめる近道になると思っています。(冒頭に書いた通り、体力・能力にもよりますが)

新年度に入りました。
逆算のトレーニングをスタートさせて、大幅な記録更新を狙ってください!

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