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弘山勉のブログ

中長距離のパフォーマンスを上げる暑さ対策 ~その2~

投稿日: 2015年 6月 30日 火曜日

前回、夏の熱中症対策として、トレーニングの工夫について書きましたが、その続きです。

まずは、雑学から・・・夏季に長い時間や距離を走る前に、基本的なことを知っておいてほしいと思います。

水分は、カラダを冷却する媒体として機能するために、「体温の運搬体」と言われたりします。それは、下記の2つの理由からです。

・筋肉と内蔵で熱産生が行われ、血液が巡ることで熱が移動する
・体温の放出(冷却)は汗の蒸発に依存している

こう表現すると『核心温度』と『外殻温度』というイメージが自然と浮かんできます。高温多湿環境でカラダを冷却させるためには、「体内で発生した熱を皮膚で放出する」というメカニズムを上手く機能させることが求められます。

熱運搬と水分循環

汗をかくことによって外殻温度を下げるわけですが、外部環境の影響を受けやすいので、酷暑環境下では、外殻温度は下がりにくくなります。カラダが冷却されにくいので、発汗量を増やすなどカラダは大変な作業を強いられるわけです。

影響は小さいですが、「冷たい水分を摂ると、一時的ですが、体温を下げる効果が期待できる」という核心温度を下げる方法もあります。まあ、やらないよりはやったほうが良いと思います。

このように、核心温度と外殻温度という概念を持つとカラダを冷却する工夫がしやすくなるはずです。

高温多湿の環境下で、水分を補給しないで強い運動を数時間も続けると、当然、カラダの水分が減っていきます。血漿(=血液の液体部分)が減っていくなど「体温の運搬体」である水分が失われ熱の運搬がされにくくなり、汗の量も減るために熱の放出もされにくくなります。そうして、体温調節(冷却)ができなくなるから、注意が必要なのです。

カラダの水分が不足した状態で、激しいスポーツを続けると、突然の虚脱状態と意識不明に陥り、「熱中症」いわゆる「熱射病」を引き起こすことになります。

ヒトは、60%が水分です。その体水分量の3%くらいの水分損出でも運動能力の低下を確認できると言われます。3%というと、60kgの体重の人で、1.08リットルという計算。「こんな量、すぐに汗で失いそう」と思えます。(汗だけでなく、呼吸や排尿などでもカラダの水分は失われることも忘れないでください)

これ以上の体水分量の損失を招くと、危険な状態が訪れてきます。

3%(60kgの人で1.08リットル)の水分が失われると運動能力の低下が始まる
5%(60kgの人で1.8リットル)の水分が失われると、熱疲労が増す
7%(60kgの人で2.5リットル)の水分損失で幻覚症状を示すようになり、危険な状態に陥る
10%(60kgの人で3.6リットル)では、もはや、熱射病。救命措置が必要な状態です。

そうならないためには、「体温をコントロールすること」「水分の収支を把握すること」が必要です。つまり、発汗量を抑えて体温の上昇を防ぐことと水分摂取量と発汗量を気にしながら走ることです。

そのためにできることとして、前回の『1.トレーニングの工夫』に続き

2.服装の工夫

外殻温度を下げるために、軽装でトレーニングするのは当然です。汗の蒸発を促すことや熱気がウェア内に滞留しないようにしなければなりません。

通気性の良い素材や光を吸収しにくい色のウェアを選択してほしいと思います。直射日光を受けると暑く感じますが、速いペースでのランニング時にウェアで皮膚を覆うのは、逆効果です(ウォーキングやゆっくりJOGならば、問題ないでしょうが)。

脚の発汗は自覚しにくいために、下半身用のウェアを身に付ける人を多く見かけますが、ランニングの場合、脚をウェアで覆っても体温は上昇しますから、脚の部分も軽装を心がけましょう。

また、強い日差しが目を通して、身体に刺激を与えます。視覚から暑さをより感じることになりますし、眼精疲労を招くとも言われています。暑さを感じないためにも、目を保護する上でも、サングラスの着用は是非ともしてほしいと思います。

3.水分補給の工夫

水分補給では、「何を飲むか?」「どれくらいの量を飲むか?」を考える必要があります。

一度に水分を大量に摂取してもカラダは吸収できませんから、「こまめに水分を摂れ」と言われます。ということは、吸収率が重要になってきます。

ドリンクの成分で言うと、ナトリウムの量と糖質の種類がキーとなります。

スポーツドリンクの選び方』で書きましたが、ブドウ糖とナトリウムが適正な量で配合されているスポーツドリンクは、吸収率が高いので、熱中症対策としては即効性があります「喉の渇きを覚えたら、もう遅い」と言われるほどですから、早め早めの水分摂取を心掛けるとともに、水分の成分(吸収率)には気を配らなければなりません。

また、夏季は、食欲不振で水分摂取量が多くなるので、下痢を引き起こしやすい状況になっています。スポーツ栄養に関するIOC(国際オリンピック委員会)の合意声明によると、腹部不快感が起きないように2種以上の糖質を含むスポーツ飲料の摂取を推奨しています

このようなことを考慮して、アスリートLabでは、ブドウ糖と果糖を含み、しかも、ナトリウムの量も理想的なポカリスエットを推奨しているのです。

糖の種類による吸収率の違い

「水分の吸収は後回しで良い」「糖をすぐに吸収させたくない」などの特別な理由があれば、果糖主体のドリンクでも問題はないのですが、何も考えずにドリンクを選ぶことは、高温多湿環境となる夏は好ましくありません。スポーツをする人は、熱中症にならないためにも、「目的や環境に応じたスポーツドリンク選び」を習慣化してほしいと思います。

2回に分けて書きましたが、暑さ対策の3原則『トレーニング』『服装』『給水』を自分なりに工夫して、この夏のトレーニングを充実させ、パフォーマンスの向上に繋げてください。

「カラダの鍛練期」と言われる夏が「カラダの消耗期」にならないようにしてほしいと思います!

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