EVOLUランニングクラブ

弘山勉のブログ

筋肉の働きがランニングパフォーマンスに与える影響

投稿日: 2015年 7月 24日 金曜日

運動のパフォーマンスと筋肉の関係を語るには、筋肉の役割を考える必要があります。

今回は、「ただ筋肉を動かす」ということから一歩踏み込んで、筋肉が運動中に力を発揮しているときの細かな状態について考えてみたいと思います。

ヒトの関節は、230~360あるとされています。数にかなりの開きがあるのは、分類のされ方で差があるためです。筋肉の数も多いです。600以上と言われています。また、各関節の動きに関与する筋肉の数も多く、例えば、「骨盤は前傾させるの?」で書いたように、骨盤を動かすための筋肉は20以上にもなります。

筋肉が関節を動かすので、「筋肉がどう動くかで関節の動きが決まる」とは思います。同時に大切なのが、主導筋と拮抗筋のバランスのとれた活動です。「関節がこう動くから筋肉がこう動く」という逆説的な論理は、通常は成り立ちません(特殊なケースは存在する)。

ただ、解釈として難しいのは、ある関節の動きで他の関節の動きが決まってくるという事実。ということは、ある部分は、関節の動きで筋肉の動きが決まってくると言えなくもありません。

例えば、ランニングの場合、筋肉が地面に力を加えるのではなく、正しくは、筋肉が関節を動かして、作用点(地面と足が触れている接地点)に力を加えるのです。つまり、作用点(右足)から次の作用点(左足)への連続移動を繰り返す運動がランニングです。

作用点移動運動

この作用点へ大きな力を加えるために、身体全体の関節を動かすわけです。脚の関節だけ動かしても、大きな力は発揮されません。ランニングは全身運動です。

力(パワー)が「筋肉⇒関節⇒作用点⇒地面」のような流れで上手く伝達できると、アキレス腱に代表される腱の弾性エネルギーも使うことができるようになります(後述で解説)。

まずは、これらを理解して実践しないと「速く走る」「効率良く走る」ことはできないと思います。

ランニングは、作用点により大きな力を加えること(接地運動)と作用点となる足部の移動を速く効率よく行うこと(空中運動)が重要です。そのために、「各関節をどう動かし、時には固定するか?」その関節を動かし制御するのが主に筋肉と腱になるのです。人によって、理想とする動きは違うとされますが、運動力学やバイオメカニクスなどの理論上では、理想とされる動き(フォーム)は限定されていくのが普通です。

ランニングは小さなジャンプの繰り返しです。ジャンプと考えた場合に、身体はどんな筋活動をするのでしょうか?

腕を振り下ろしながら身体を縮める:広背筋、腹筋など
膝を屈曲した状態で切り返し(縮むから伸ばす):内転筋、お尻の筋肉など
地面を踏み込む:大腿四頭筋、ハムストリングス、下腿三頭筋など
地面を強く蹴り、腕を振り上げ身体を伸ばしながら跳ぶ:三角筋、僧帽筋、脊柱起立筋など

上記には、主な筋肉しか記していませんが、たくさんの筋肉が動員されています。脚筋だけではないのです。そして、ランニングの場合、左右が交互に縮み伸びを繰り返すことになります。

身体を伸び縮みさせるための関節の動きに関与する筋肉は、短縮性収縮、伸張性収縮、等尺性収縮を瞬時に切り替えています。そうした筋肉の働きのおかげで、関節は、回転、回旋、前後、左右、上下に、ときには、複雑な3次元の動きができるわけです。

極論としては、自分の関節の動きを把握して、それぞれの筋肉の役割を分析して、どの筋肉が3種類(短縮・伸張・等尺)のどの運動をしているかを割り出してトレーニング(筋トレ)をするという考え方はありでしょう。言い換えれば、「関節をどう動かしたいのか?」「そのために、筋肉にどういう動きを覚えさせ、鍛えるのか?」という議論になるのだと思います。

筋肉の発達法や筋力トレーニングの考え方は、非常に難しいということです。

それを少しでも簡単にするために、「筋肉というものは基本的に縮む事によって力を出す組織である」ということを念頭に置くこと、また、最も大きなパワーを生み出すために『筋-腱複合体』という考えを取り入れるといいと思います。(下記の画像は、弾性エネルギーを体感できる代表的なエクササイズのBOXジャンプ)

BOXジャンプ

主導筋が、伸張性収縮した後に短縮性収縮することを「伸張-短縮サイクル」と呼び、腱の弾性エネルギーが貯蔵され、再利用され、より大きなパワーを生み出すと言われています。伸ばされた筋肉は、それに負けないだけの力を発揮しようとするのを利用するわけです。前述の通り、筋肉は縮むことによって力を出すのですから。

代表的な部位が、下腿の筋肉とアキレス腱です。『筋-腱複合体』『伸張-短縮サイクル』を利用することができれば、ランニングの作用点に大きな力を伝え、反力を獲得することができます。ただし、これには、動きのテクニックが必要です。その証拠に、速い長距離ランナーは、「下腿=ふくらはぎ」があまり発達していませんよね。(これについても、また今度説明します)

ランニング時の筋収縮

ランニングに限らず、全ての運動に『筋-腱複合体』『伸張-短縮サイクル』は当てはまります。これらメカニズムを理解して、動きやフォームを突き詰めていく作業はとても楽しいと思います。

EVOLUアスリートクラブの中村は、日本選手権で4位に終わり、その敗因を私なりに分析した結果、一番は「フォーム(動き)」だと感じています。

日本選手権前は、とてもハードなトレーニングを消化し、筋肉を痛めつけて回復させるということを繰り返しました。BCAA摂取という新たな取り組みをしながら、筋肉自体の能力は相当高まったと客観的に見て、そう思います。

実際、ホクレンディスタンスチャレンジ大会でも、600mを1分20秒ちょうどで余裕を持って通過しています。しかし、ラストが伸びない・・・これはもう、動きやフォーム、それを作り出す筋肉の働かせ方が原因なのは間違いありません。中村の場合、前述の空中動作に改善の余地が多分にあると考えています。(空中動作をするための接地動作なので、結局は全て:笑)

『筋-腱複合体』『伸張-短縮サイクル』を活用できようになると、スピードが出せるようになります。従来よりも一瞬で力を発揮しなければいけない局面が増します。つまり、速筋が動員される割合が増えます。そうなると、乳酸が多く発生しますから、組織は酸性に傾くので、筋肉の働きは弱くなります。

その使い方で筋肉を鍛えるには、BCAAの摂取が有効になるのは間違いありません。速筋を鍛え、超回復を促すには、筋肉の活動を制限する要因を除外していくことが求められます。そういったコンディショニングにアミノ酸の摂取は効果的だと思われます。

筋肉と関節の動きがスピードと持久力に大いに貢献します。「筋肉と関節に着目したトレーニング」を実践するとともに「筋肉のコンディショニング」を怠らずに故障しないよう努めていただき、パフォーマンスの向上を目指していってほしいと思います。

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