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弘山勉のブログ

オーバートレーニングを回避してポジティブにトレーニング!

投稿日: 2015年 9月 7日 月曜日

皆さん、夏の走り込みは上手くいきましたか? 疲労は残っていますか?

陸上の長距離走者の方、夏の走り込みを終え、いよいよスピードを上げていく時期に移行していると思います。男子選手の場合、月間走行距離が1000kmを超えることも多々あります(走行距離の加算方法で違いますが)。しかし、「たくさん練習したのに、調子が上がらない・・・」なんてことありますよね。そんな時、「オーバートレーニングなんじゃないの?」という疑いの声を良く聞きます。

私は、学生時代に一度だけ月間走行距離が1000kmを超えたことがありますが、その後、あまり身体は動かなかったような記憶があります。身体が動くようになってくるまでに、1ヶ月ほど要したでしょうか。オーバートレーニングだったのか? いやいや、そういう考え方を私はしません。

オーバートレーニングとは、主に「疲労が蓄積した状態」を指していますが、言い換えると、「運動によって破壊された組織の回復が追いつかない状態」ということでしょう。

組織や臓器が新生して新しく入れ替わる(生まれ変わる)までに、おおよそ2ヶ月くらいかかると聞いたことがあります(組織や臓器によって違う)。厳しいトレーニングを継続するとカラダが破壊され続け、負債をかかえたような状態に陥っているようなものです。

厳しいトレーニングで負った「組織破壊という負債」を返すには、たくさんの労力と時間を必要とします。しかも、その間にも、トレーニングを継続しているのですから、言葉は悪いですが、「借金を抱えては返済する」を繰り返しているようなものです。

オーバートレーニング

佐倉アスリートクラブの小出代表から話しを聞く(お酒を飲む=笑)機会が今まで何度かありましたが、そのときに言われた言葉をいつも思い出します。「農業をしている人が疲れたと言って、毎日マッサージを受けるかい?」「疲労困憊だとしても、毎日毎日、畑や田んぼに行かなければいけないのだよ」「それを繰り返して、逞しいカラダを作り上げている」と。確かに、そうだよなぁ!と思いました。

だから、ではありませんが、私自身、今まで、オーバートレーニングが原因で走れないと思ったことは一度もありませんし、選手に言ったこともありません。思うことはただ一つ。「回復を頑張るしかない!」

そうは言っても、どのくらい疲労しているかを知ることは重要です。回復に対するヒントをもらえるわけですから。世間では、疲労を計る尺度として、様々な測定を用いています。

「主観的自己評価」「安静時体温」「安静時心拍数」「体重」「血液検査」「尿検査」「心理テスト」「ストレステスト」その他、指導者の客観的評価として、「選手の顔色」「身体のむくみ」、さらに「練習タイム」「呼吸数」「運動時心拍数」などが挙げられると思います。

これらの数値には、個人差があるのは当たり前ですが、トレーニングの影響、食事の影響、心理的影響、生活(仕事や勉強)の影響などがあります。つまり、被験個体の状態は一定でない上に、検査や試験をするタイミングもまちまちです。強化期や試合期では許容範囲も違ってきますから、判断は難しくなります。さらに、自己判断や他者判断があるように、疲労を推し量るための指標は、ひじょうに曖昧な感じが否めません。

(曖昧なのですから、オーバートレーニングという断定はやめましょう。せっかく、練習をしてきたわけですし)

疲労があると判断した場合、スポーツ治療や栄養補給(サプリメントなど)、入浴(交代浴)、アイシングなどを取り入れて、身体の新陳代謝を高める、または、炎症を抑えるなどして、回復を図っていることでしょう。

どの方法で疲労回復を図るか?
そのために、客観的な判断を下す必要があります。

その代表的な手法として、多くのアスリートが定期的に実施している血液検査が挙げられます。中でも、筋疲労を示す値として、CK(CPK)に注目していることと思います。それは、CKは筋肉(細胞)が壊れると遊離して血中に放出されるからです。(つまり、CK値が高い場合は、筋肉の細胞が壊れたことを意味します)

CK=クレアチンキナーゼ
CPK=クレアチンホスホキナーゼ
(CKとCPKの差は、ホスホ(リン酸)が名前に入るかどうかで同じ酵素です)

CKには、2つのサブユニットがありM(筋型)とB(脳型)に分けられ、MM、MB、BBと3つのアイソザイムがあります。骨格筋にはCK−MM、心臓にはCK-MMとCK-MB、脳にはCK-BBが存在します。そのうち、血中に放出されるCKの90%以上が筋肉型です。そういうわけで、普通の生活の場合、血漿CK値は、筋肉量に比例します。

CKの役割

CKは、筋肉の収縮の際にエネルギー代謝に関与します。その働きは、クレアチンとATPからクレアチンリン酸とADPが生成する反応の媒介です。つまり、クレアチンがクレアチンキナーゼによってクレアチンリン酸になるということです。(クレアチンリン酸は、筋肉のエネルギーで爆発的な力を発揮させます

基準値は以下のような感じで言われています。
男性:40~200IU/L(JSCC標準では、60~270IU/L)
女性:30~120IU/L(JSCC標準では、40~150IU/L)

「筋肉量と比例するために、男性は女性と比較して20~30%高値である」ということは、豊富な筋肉を備えたいアスリートならば、血漿CK値はやや高めが理想的だと思うわけです。

私の場合、マラソンを走った2~3日後に血液検査を必ずしましたが、血漿CKが2000~3000という値を示していました。24時間後がピークと考えると、4000IU/Lという値だったのかもしれません。とくに脚が痛いですが、ほぼ全身が筋肉痛となりましたので、筋肉の破壊量は相当なものだったと思います。

その状況を軽減(回避)する方法があるのです。随分前になりますが、私が在籍していた筑波大学の栄養学研究室の下村先生(当時、現在は名古屋大学教授)にレポートを提供いただきました。その中に、とても興味深い研究結果が紹介されていました。

インターナショナル・ジャーナル・スポーツニュートリション・アンド・エクササイズ・メタボリズムから2008年に発表された論文です。

この実験は、平均28.5歳の男性自転車選手12名に、4グラムのBCAAが含まれる飲料を1日3本飲む生活を2週間送ってもらい、その間に、オールアウトとなるまでの運動を計3回課したというものです。

【1回目運動=1日目】→(2週間後)→【2回目運動=15日目】→【3回目運動=16日目】

結果は
・BCAAを摂取していないグループは16日目の運動持続時間が低下した
BCAAを摂取しているグループは16日目でも運動持続時間が維持された

この実験のポイントは、血漿CK値の変化に注目しているところです。
・1日目の運動後では、BCAA摂取の有無を問わずに数値は上がったが、BCAA摂取群のほうが低値を示した
2週間後に2日連続で実施したオールアウト(全力)運動時には、BCAA摂取群は、ほとんど数値が上がらなかった

BCAA摂取実験①         下向き矢印BCAA摂取実験②

「BCAAには、筋肉の損傷防止あるいは回復させるような作用、あるいは、両者を伴った作用がある」と書かれています。筋細胞の破壊量が減少し、筋細胞の合成(新生)が活性化するということは、筋疲労という観点からは、オーバートレーニングに陥らない効果が期待できるのではないでしょうか。

ただし、たくさん練習できる可能性は高まりますが、それだけ肝臓などの他の臓器や組織への負担が増しますので、注意が必要です。いたずらに練習量を増やし続けることは、やめたほうがいいと考えます。

『オーバートレーニング』というと、どうしてもネガティブな印象があります。頑張って練習したのに、「お前、練習をやり過ぎだったな」「その努力は無駄だったかも」と言われている気がしてなりません。

ポジティブ・シンキングでトレーニングに臨むことはとても大事なことですよ!

だからこそ、オーバートレーニングにならない準備、または、効率よく回復させる方法を選択していくことが求められます。その一つの方法として、BCAAの積極的摂取が有効であることを示しておきたいと思います。

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