EVOLUランニングクラブ

弘山勉のブログ

ロードに強い走り~上り坂編~

投稿日: 2015年 11月 19日 木曜日

ロードレース真っ盛りの今、皆さん、満足できる結果は、出ているでしょうか?「 トラックレースでは速いのに、ロードではそれほど速くない」そんな方もいるでしょう。私は、その逆でしたが(笑)。

トラックで走る力(走力)が同じAとBという人がいると仮定して、ロードでは、AとBの走力に、明らかな差が出る場合があります。それはどうしてでしょう? 少し考えてみましょう。

コース(走路)条件が違うので、答えは、たくさんあると思います。

外的要因としては、前回書いた「路面硬度」に加えて「高低差(上り下り)」「路面の傾きや凹凸」「カーブの角度(折り返しもある)」「風」などが挙げられます。内的要因(身体能力や機能)としては、高低差や風があるので、酸素摂取能力や筋力も関係してきます。ただ、トラックでの走力が同じなのですから、その要因は、動き(フォーム)と筋力が大部分を占めると思います。

道路(ロード)の場合、硬いアスファルト、路面の凹凸、上り坂、向かい風、急カーブなど、ロードコースでは、厳しい条件が重なります。また、ロードは、基本的に風を遮るものが少ないので、風の影響が受けて、尚且つ、上記の条件が複数揃うとこれはかなりの走力を必要とします。

余談ですが、強い向かい風の場合は、走力に加えて、体重が重いほうが有利とされています。太っているという意味ではありませんが、向かい風の場合は、痩せているよりは太っている選手のほうが強いかも(笑)。

20150112_3

路面硬度に対する話は、前回書きました。接地という言葉を使ったので、ちょっと伝わりにくかったかもしれませんが(言葉で伝えるには、難しい領域の話はではあります)、その走り方ができるとロードでの力発揮はしやすくなります。

なぜならば、つま先側で押す場合は、脚(足)の筋肉が緊張する場面がけっこう多いからです。脚の筋肉の伸び縮みで、上り下りや傾き、凹凸に対応します。つま先立ちで対応することを想像していただくとわかりやすいかもしれません。作用点がつま先ですから、点の上で立っているようなイメージが沸いてきます(極端な例えですが)。自分の力で推進力を生まなければいけない走りと言えます。

一方、踵側で押せる走りの場合、地面を押している最中の足首は固定ぎみになるので、作用点は点よりも広い面に近づきます(押した後に足首を使うイメージ)。膝関節も安定しやすくなるので、様々な路面環境に対応するのも、脚筋よりも強い腰周辺やお尻の筋肉になっていきます。

関節が安定するので、自重作用(重心移動)でも地面を押しやすく、進むための自力をそれほど発揮しなくてもOKです。つまりは、筋疲労がしにくいと私は思っています。こんな理由で述べています(前回の投稿に、少し補足を加えておきます)。これらを頭に置いて、読んでいってください。

さて、今回は、ロードコースで最も特徴的な高低差の対応、とくに、上り坂の走り方について、書きたいと思います(下り坂は次回に)。

上り坂

まずは、何と言っても地面を押すことです。押さないと上れないし、進みません。前回書いた押し方を実践できれば良いと思います。上り坂は、傾斜があるために、路面を押せる範囲が小さくなります。そのために、上体の乗り込み動作と膝関節の伸展、および、骨盤を積極的に使えるかがポイントになります。上り傾斜があるので、深い前傾姿勢が有利になるのは、言うまでもありません(押せる範囲に影響します)

上り坂押せる範囲

・上体を上手く乗り込ませることができると自重力で地面を押すことができる

・地面を押しながら膝関節が伸展できると、地面に力を伝え、より進むことができる

・骨盤が正しく動くと腰周辺の筋肉が使え、跳ばなくてもストライドが自然と広がる

脚の力(とくに足首)だけで走ると上り坂をジャンプしながら駆け上がるようなものです。想像すればわかる通り、疲労しやすく、すぐに苦しくなるはずです。

ですから、イメージとして『腰で走る』という動作ができるかどうかです。少し詳しく説明していきます。

上り坂だと、どうしても上げる脚のほうを強く意識しがちですが、この意識は小さくてよいと思います。理由はいくつかあります。路面を押している途中で脚を上げようとすると、脚が切り替わるタイミングを早めることになります。当然、身体を後傾(後ろに倒す)動作が(わずかですが)加わります

腰が動く前に膝が先に上がると、大抵は腰(骨盤)の動きは小さくなります。試してもらえばわかりますが、膝を先に上げる走りをすると腰の動きは止まってしまうものです。つまり、骨盤の正常な動きを妨げてしまうので、無理矢理に筋力で脚を動かすことが必要になってきます。ピッチを上げようとするので、当然、体力を消耗しやすいです。

通常は、ピッチ走法のほうが筋力を必要とします。違う言い方をすると、疲労しやすいということです。

地面を押すほうの脚に力を加えて、逆に、リード脚(前に出すほうの脚)の力は抜くことが大切。如何に無駄な力を使わずに脚を上げられるかでしょう。力を抜けば、リード脚を速く動かすことができますから、脚を上げる始動(タイミング)が遅れても、何ら問題ありません。

また、いろんな意味で、上り坂では腕振りは重要です。腕振りの重要性は、前のブログで書いたので、そちらを参照していただければと思いますが、ここからは、その際の投稿で挙げた「④力発揮のベクトル(方向性)」の解説に近い内容となります。

上り坂での腕振りのポイントは、上る方向、すなわち、下の位置から斜め上方に腕を持っていくことで、リード脚は上がりやすくなり、腕と一緒に胴体も前に持っていくことができます。これは、ジャンプの時に腕の使い方に似てくると思います。

上り坂の腕振り

上り坂は、ピッチかストライドか?これは、大いに議論が分かれると思います。ストライド走法は大きな動きに見えるので、体力を消耗するように感じますが、足首を過剰に使って跳んでいない限り、実は、意外と大きな力を必要としないものです。それは、もちろん、理に適ったフォームの場合に限るので、重心位置や重心の乗り込み、タイミング、上半身と下半身の連動、踵側で押す、などが上手く噛み合っていることが条件にはなりますが・・・。ストライドを効かせて、坂を上るほうが、結果的に早くゴールすると私は思っています。

上り坂の留意点をまとめると

〇軸脚にしっかり乗って地面を押すこと

〇リード脚は地面を押してから上げるくらいの意識で良い
(リード脚は腰が動いてから上げるイメージ)

〇リード脚は力を抜くこと

〇肩を振らないで腕を前後に振る
(腕を前後に振ることで上体の捻転がなされ、その結果、肩が振られるように見える)

〇踵は着かないが踵側で地面を押すと良いことが多い

〇深い前傾姿勢(傾斜の関係と路面を押す距離に影響)

〇路面を捉え続ける(摑まえる)=腰で走る

〇路面をしっかり押す(膝が伸展=膝は引かないこと

〇肩甲骨が動く腕振り(肩ではない内部の捻転動作を生む)

〇腕を下から斜め上にリード脚とタイミングを合わせて振る
(力発揮のベクトル=方向性に影響する)

細かいことを言うと沢山ありますが、このくらいで・・(十分に多いか:笑)。

対策としては、「フォーム改善」「筋力アップ」となります。筋力トレーニングも必要ですが、アップダウンのコースを実際に走って、動き改善と筋力アップを図ることが近道だと思います。ただし、故障のリスクが高まりますから、フォーム改善は常に意識したほうが良いでしょう。

フォーム改善練習(ドリルなど)は漠然と実施しても効果はありません。しっかりと意識して取り組んでいただければと思います。
(例として)⇒骨盤から脚を動かすテクニック練習@ランニングクラブ

最後に、少し話は逸れますが、ピッチ走法とストライド走法の分かれ目は、私は、地面を押している「どの場面でリード脚が動き出すのか」で区別されるべきなのでは、と漠然と考えています。(この話も機会があれば、整理して書いてみたいと思います)

-次回の「下り坂」へ続く-

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