弘山勉のブログ
ロードに強い走り~下り坂の走り方<後編>~
投稿日: 2015年 12月 31日 木曜日
ロードに強い走り 「下り坂の走り方」の続編では、実際のランニングフォームに落とし込んでみたいと思います。
下りを走る際の意識として、大きく分けて、以下の4つのポイントを挙げておきます。
①股関節(大転子あたり)に乗っていく
②脚の素早い切り返し(足を蹴り上げない、抜き足動作)
③脚(足)を前に出す(脱力、背中を使う)
④上体は垂直(意識としてはやや後傾ぎみ)
4つに分けましたが、細分化することもできます。ただ、細分化したところで、全ての動作は互いに影響し合って成り立つものなので、4つくらいが妥当なところかな、と思います。
例えば、前号で書いたように「膝が押し出されないように」というポイントを挙げても、「股関節に乗る意識」で走れば、膝関節は動きにくくなります。再三述べてきたように、何かを意識すると同時に他が制御(コントロール)されるので、意識するポイントをどこに置くかが大切だと思います。
では、各ポイントについて、少し詳しく説明します。
①股関節に乗っていく
大転子あたりに乗っていく意識を持つことです。前号で書いたように、足関節と膝関節が動きにくくなるので、下りに必要のない上下動が小さくなります。
つまり、脚筋の余分な収縮(伸張性と短縮性)が減ります。筋肉が最もダメージを受ける伸張性収縮を抑えることで、後半のスタミナの温存も期待できます。
股関節(骨盤)の(わずかな)動きで、脚を切り替えることができるので、ピッチを早めることができると思います。
②脚の素早い切り返し
股関節に乗る意識で走るということは、脚を棒のように使うことにもなりますから、ピッチを早めて、1回の股関節への衝撃を緩衝して(逃がして)あげる必要があります。
足を蹴り上げる動作を極力小さくしないといけないので、フラットに接地して、踵側でポンっと地面を押してあげましょう。足部(足首)が前寄りの上にはね上がるので、蹴り上がらなくなります。
下りの場合、ブレーキをかける必要があるために、どうしても足先側に力を入れることになります。その結果、蹴り上げ動作がどうしても起きてしまいます。足先で接地してそのまま地面を蹴るのではなく、踵側を使えるようにするといいでしょう。
そのためには、抜き足動作に近い動きが必要です。抜き足をつま先で行うと腰が動かないので、できるだけフラットに接地して(または、つま先で着地してもフラット接地に戻すくらいの意識で)足の踵側(または中心)で地面を軽く押して抜き足動作を心がけてください。
③脚(足)を前に出す
上記の抜き足動作をするためには、足が離地した(地面から離れた)瞬間に脱力することが求められます。
(写真は中距離のアスリート中村の動きなので、イメージがしにくいですが、抜き足をイメージしてください)
①の股関節の意識は片脚(接地に向かう瞬間)であり、遊脚(足を前に出す)動作は脱力しないと脚を棒の状態で前に出していくことになるので、脚が出にくい状況を作ってしまうことになりかねません。
地面を押す動作はカラダの前面に力を入れるのですが、脚を前に出す動作は、背中を積極的に使うとスムーズに行えます。ポイントは、背中の筋肉を使って、脚は脱力することです。(着地=接地の場合は、カラダの前面に力が入りますが、左右前後という話になるので、ここでは省略します)
④上体は垂直(後傾ぎみに感じる)
脚を前に出す際に、通常は骨盤は後傾させます(前傾のままでは出にくい)。ピッチを早めたいので、骨盤を大きく前後に傾けることはしたくないので、骨盤を立てた状態を意識して、前後に少し動かす意識で走るようにしたいところです。下り坂は、脚を出していくことが大事なので、どちらかというと軽い後傾の場面が多くなるかもしれません。
下り坂では、カラダを垂直に立たせることで後傾ぎみの骨盤を常に立った状態にすることができます。背中と大腿部裏の距離を近づけることで脚を前に出しやすくするという狙いもあります。
つまり、地面を押しやすく、脚も前に出しやすい状況を作ることができれば、ピッチを早めることができると思います。
※腰部を鍛えて、また、よく動くようにする(故障防止)
以上、4つのポイントを上げましたが、骨盤や腰部という言葉をたくさん用いるように、股関節と腰仙関節、仙腸関節(腰部の筋肉と骨盤)の動きが大切です。(参考までに、前に使用した画像を載せておきます)
腰部の骨や筋肉の負担も増しますので、ウェイトトレーニングやジャンプ系トレーニングをしっかりと行って、腰部の「筋肉」と「動き」を意識して、筋力と技術を高めていくことが必要だと思います。
3回に渡り、上り坂と下り坂の走り方を解説してみましたが(文章で説明するのは、ほんとうに難しいです)、箱根駅伝の名物、5区と6区で速い選手がどんな走りをしているか、私が挙げたポイントと照らし合わせながら観戦していただくと、より面白くテレビを観ることができると思います。参考にしてみてください。
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