弘山勉のブログ

マラソンとランニングエコノミー ~エネルギー編~

投稿日: 2016年 2月 9日 火曜日

マラソンシーズンも折り返し点を迎え、後半戦に突入ですね。いよいよ狙ったレースが迫ってきているというところでしょうか。今回は、マラソンに関係する話しをしたいと思います。

ランニングエコノミーという言葉がありますが、「経済性に優れた走り」と訳せば、何となくイメージはできます。大事なことは、ランニングにおけるエコノミーの解釈になりますし、忘れてはいけないのは、パフォーマンスに関係する一部分でしかないことです。

私がランニングエコノミーを考えるとしたら、大きく分けて3つに分類します。

1.エネルギー系
2.運動器系(筋肉・循環器)
3.技術系(フォーム)

ランニングエコノミー要素

「ECO走行」として、車の場合、「車体が小さくて軽い軽自動車」と「排気量も車体も大きい車」が比較されたりします。

ランニングも似ていてわかりやすいので、ここでも用いてみます。

この例えで、真先に思い浮かべるのが、燃費です。「ECO=燃費」とした場合、軽自動車のほうがECO指数は高いことになります。ランニングも同様で、同じスピードで走ったとして、エネルギーの消費量が少ないのは体重の軽い人になります。酸素摂取能力は持久力に比例すると言われますが、最大酸素摂取量を体重で除した数値が用いられるのはそのためです。

マラソンで燃費が重視されるのは、よく鍛えたランナーが筋グリコーゲン貯蔵量を高めても、それだけでは30km程度しか走れないところにあります。体脂肪が多いと重い分だけエネルギーを消費するので、狙ったレースに向けては、体脂肪を削ぎ落としていく必要が出てきます。

ランニングのパフォーマンスという点で考えてみましょう。

マラソンは、42.195km先に自分の身体を速く運ぶ競技です。軽自動車と3000ccの車が、100kmの目的地までの到着時間を競うとします。同じ運転技術であれば、排気量の大きな車が勝つのが当たり前です。マラソンでも同じことが言えると思います。燃費を気にせずに走れば、筋肉量が豊富でスピードがあるランナーが勝つでしょう。

では、条件をつけてみます。燃料がともに10リットルしか入っていないとしたらどうでしょう?

軽自動車は、アクセル全開で突っ走っても100kmを走行できます(走行可能だと思いますが、定かではない・・・)が、排気量の大きな車は、車体が重いので、相当なECO走法をしないとガス欠を引き起こしてゴールできないと思います。

さて、どちらが先にゴールするでしょう。けっこう良い勝負になると思います。

私の言いたいことがおわかりいただけると思いますが、マラソンは、限りのある貯蔵エネルギー(主に筋グリコーゲン)をどう使うかという競技です。ランニングエコノミーという言葉が用いられるようになったのは、そんなところから来ているのかもしれません。

目標とするタイムを出すためのペースでエコノミー指数を高めるのがトレーニングになります。これはフルマラソンだけでなく、中距離から自転車、水泳まで含めても良いかもしれません。私は、走ること以外、専門に競技したことはありませんが・・。

マラソンで言うECO走法をエネルギー系という観点で考えると、やはり「遊離脂肪酸をエネルギーとしてどれだけ使えるか?」にかかっていると思います。それは、グリコーゲンの節約になるからです。

運動強度でエネルギー代謝回路(何をエネルギーに換えるか)は割合が変わります。でも、それは人それぞれです。同じ速度で走っても、そのランナーが有するスピード能力で運動強度は異なるからです(もちろん、他にも要因は多々ありますが)。

例えば、「3分20秒/kmペースで走るとして、1kmを全力で2分30秒で走ることができる長距離ランナーと3分でしか走れない人で比較すると、どちらに余裕があり、どちらが遊離脂肪酸を多く使えるか」を普通に考えて、その答えは明らかです。要は、LTやOBLAのペースが速いか遅いかということですから、「マラソンにスピード能力が大切である」主な理由となるはずです。

走力による余裕度

距離が長いほど有酸素運動となるペースでしか走れないのが普通です。有酸素運動は、クエン酸回路(TCAサイクル)と呼ばれるエネルギー生産効率に優れたエネルギー代謝で営まれます。エネルギー源としては、ブドウ糖(グルコース)と遊離脂肪酸が同時に使われます。グルコース1個につき38個のATP、脂肪酸1個につき100個以上のATPが作られると言われています。

グリコーゲンを主な原料に使う無酸素運動は、グルコース1個につき、2個のATPしか作り出せませんが(同時に乳酸も2個作られる)、文字通り、酸素を必要としません(酸素を借金するので、後で必要となりますが=酸素借)。特徴は、速いスピードに対応できるエネルギー代謝回路です。当人にとって高いスピード出力が必要となるのペース(速度)領域に入ると、この無酸素運動(エネルギー代謝)の割合が増えていくことになります。

エネルギー代謝イメージ
※↑上記の図はイメージです(実際の代謝の変化は違います)

苦しいペース(無酸素運動レベル)で走ると糖がどんどん消費されます。同時に乳酸も発生し、再利用されますが、ランニングの持続という点では、糖の浪費と言っていいでしょう。

糖の浪費ということで忘れてはならないのが、タンパク質をエネルギーに換える代謝機能です。身体の糖が減り過ぎるとタンパク質が分解され、エネルギーを作り出します。糖の枯渇状態でなくても、アミノ酸(BCAA)は、常に利用されていることがわかっています。

マラソンの後半は、筋グリコーゲンが枯渇するために、筋タンパク(アミノ酸=BCAA)がどんどん利用される状況に陥ります。タンパク質の多量の分解は、カラダのダメージを大きくします。(カラダのほとんどがタンパク質で作られているからです)。

そのために、カラダ(とくに筋肉)を守るという意味で、カラダから運動抑制の信号が出されるのではないかと予想しています。これは、私の想像の域でしかありませんが、このことが書かれている論文があるかもしれませんね。

BCAAが、持久系アミノ酸と言われるのは、そのためで、レース前やレース中に飲用すると持久力が向上する理由となっているのだと思います。

現在、世の中には、スポーツ飲料、栄養サプリメント、携帯用エナジージェル、など様々な商品が発売されています。「それらの何をどのタイミンでどのくらい摂取するか?」は、当然、ランニングエコノミーに関係します。

ただ単に「“売り”のフレーズ」に飛びつかず、自分がどんなタイプで、どんなペースで走り、どんな食事を摂って、レースに臨むかを考えて選んでください。また、いきなり狙ったレースで初めて使用するのではなく、トレーニングや調整レースで試すようにしてください。これに関しては、今度、書いてみたいと思います。

最後に、まとめですが

スピード走能力が高まると従来の無酸素運動の走レベルが、有酸素運動の走レベルに低下します。つまり、それだけ有酸素運動(遊離脂肪酸利用)で対応できる走行速度が高まります。

ベースとなるスピード走能力を高めると、「ブドウ糖(グルコース)を節約」し、「できるだけ脂肪を使い」、最後の「筋タンパクの分解も少なくさせる」ことが可能となります。速いスピードで走ってもECO走行できることになるわけです。この考え方がマラソンのランニングエコノミーだと思います。

この考え方を基本にしないと、パフォーマンスは向上していかないでしょう。これは、マラソンに限らずだと思いますが。

持久走の距離を伸ばしたり、インターバルの本数を多くしたりすることで、記録は伸びるじゃないか!?との主張もあるでしょう。もちろん、そういう練習が中長距離の記録を伸ばします。遅筋が有するミトコンドリア(ATP回路がある場所)やミオグロビンを増やし、毛細血管を発達させますからね。

そもそもトレーニングは、これらミトコンドリアやミオグロビン、毛細血管を増やすことと、ミトコンドリアに送る酸素の供給能力を高めるために行います。ただ、持久系トレーニングは、スピード走能力を高める可能性は非常に低いです。

これについては、次回、説明します。