弘山勉のブログ
マラソンとランニングエコノミー ~フォーム編~
投稿日: 2016年 2月 27日 土曜日
ランニングのパフォーマンスに、フォーム(動き)が大切であることは、誰でも知っています。ランニングエコノミーとは、経済性に優れているということなので、ランニングフォームが大いに関係することも理解していただけるはずです。
上記の写真は、2015年の日本選手権 男子800m決勝の一コマですが、左からEVOLUの中村、スズキの川元選手、富士通の横田選手です。それぞれフォームは違い、持ちタイムも、このレースの結果にも差が出ます。中村が二人に負けてしまうのは、ランニングエコノミーという観点でフォームという要素で劣っているのだと考えています。
ランニングエコノミーを良くするためのフォームを考える上で、3つの観点があると思います。そして、それぞれのキーワードを挙げると、以下のような感じでしょうか。
<力的エネルギー>
・重心位置(身体全体・各部位・部位の複合)
・位置エネルギー
・上下動(労力)
・身体や部位の重量・質量
・重力・抗重力
・空気抵抗
・摩擦(係数)
<運動力学>
・慣性の法則
・ニュートン力学・相対性理論
・テコの原理
・振り子運動
・作用・反作用
<バイオメカニクス・運動生理学>
・関節の制御(コントロール)
・筋収縮
・関節トルク
・力の伝達・伝導
難しい言葉を並べることになりましたが、実際にフォームは、上記の要素が含まれています。これらの理にかなったフォームがランニングエコノミーを向上させます。それくらい、奥が深いということです。
ですが、こんなことを考えるのは、科学者の役目なので、読み流していただいてけっこうです(笑)。余裕がある方は、面白いので考えながら進めてみてください。ただ、きりがないので、私たちは、具体的な動かし方を知るだけでいいと思います。
では、上記の難しい言葉(要素)を満たすために、実践したい動きを端的に表現すると
———————————————————————————-
・重心を高く保つ(抗重力筋を働かせる)
・上体と下体の連動(肩甲骨と骨盤、捻転動作)
・身体全体のバランスと各部位
・各関節の位置・かたち(変動と固定)
・緊張とリラックス(主導筋と拮抗筋)
・骨盤と股関節で走る(屈曲と伸展、踵側で地面を押す)
・ピッチとストライド(押す脚とリード脚)
———————————————————————————–
他にもありますが、こんなところで・・・。
これらが複雑に絡み合って、ランニングフォームは形成されます。要は、大きな地面反力を得るために身体をどう使い、得た地面反力を身体にどう伝えていくか、ということに他なりません。
それを教えるのがコーチの役割であり、選手自身が考えること。そして、動きを実践して、選手の感覚を育みながら、その選手が理想とする動きの再現能力を養うことが重要です。力がどう伝導されているのかを考えると、動きのヒントが浮かんでくると思います。
動きのことは、今までもいろいろと書いてきましたし、ここで全てを記すことはできませんから、今回、具体的なことは多くを書きませんが、一つの例として、考え方を示しておきたいと思います。
————————————————–
【上体】
腕を振る(引く)
↓
肩甲骨が動く
↓
背骨を中心に捻転動作が生まれる
↓
骨盤後傾
—————————————————
【下体】
接地する
↓
足首を固定(過剰に使わない)
↓
股関節屈曲
↓
膝関節屈曲
—————————————————
上体と下体がそれぞれ上記の動きを完了すると地面を押す準備が整います。
そして、各筋肉を効率よく働かせ、骨盤を動かし、股関節を伸展しながら、大腿骨に力を伝え、地面を押します。このときにテコの原理を利用しますし、作用・反作用の原理で力をもらいます。
一方の逆脚(リード脚)は、押した後に動くので、振り子の原理を利用しますし、慣性の法則に従ってエネルギーロスを最小限に抑えるかたちで動かします。
この動きを力を入れるべきところだけに入れ、かたちを保持するだけでよい箇所は程良い緊張で、力を抜く必要があるところはリラックスして、動かせるかどうか。そこにエコノミーはかかっています。
力のコントロールが求められます。「緊張と弛緩の切り替え」や「力を配分できる能力・技術」がないと正しいフォーム(動き)で走れません。つまり、余分な力を使わない理にかなった動きがエコノミーなわけです。
言葉で表すのは難しいですが、過去にこれらのことを書いていますので、参考にして、理解していただければと思います。
少しまとめますと
ランニングフォームでいうランニングエコノミーは、全ての動きの調和であり、協調です。各パーツの動きの精度を高めながら、協調性を失わないことだと思います。逆説的に言うならば、協調性がないと各パーツの精度は高まらないということです。
一つの動きにだけ着目しない総合的な観点で、動きを考えていってほしいと思います。
最後に、動きづくりやドリル、補強運動、サーキットトレーニングなどは、筋肉を動かす神経回路の発達、開発、呼び戻し、協調性を高めるためには、とても有効であるということを付け加えておきます。
次回は、ランニングエコノミーの要素(エネルギー系、運動器、フォーム)の相互作用について書くことにチャレンジします。言葉で表すチャレンジです(笑)。
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