弘山勉のブログ

ランニングエコノミーのまとめ ~ピッチとストライド~

投稿日: 2016年 3月 8日 火曜日

ランニングエコノミーに関わる3つの要素について、個々に説明してきましたが、最後に、相互に影響・作用することについて書いてみたいと思います。

代表的な事象を挙げながら、説明していきます。

「ピッチとストライド」 ランニングの場合、これが永遠のテーマです。

多くの方が、ストライド走法のほうがエネルギーを消費すると思っているはずです。

おそらく、ストライド走法と聞くと、ピョンピョン飛ぶイメージを持たれるからでしょうし、筋力も必要だと思うのは当然です。確かに、そんな飛ぶ走りならば、筋力は要りますし、エネルギー消費量も多くなるかもしれません。

しかし、速く走る場合、実は、ピッチ走法のほうが筋力を必要とします。意外だと感じる方は多いはずです。子供が走る場合、大きなストライドになるのですが、これは筋力が低いからだと思っています。地面を押して後ろに流れる脚を速く戻す筋力が足りないのが、主な要因だと私は勝手に解釈しています。

自分がどちらのタイプで、そうなっている理由を考えてみるのもフォーム改善のヒントとなりますよ。

ピッチかストライドか
例えば、マラソンンの場合、身長が160cmの人が一歩で進む距離を160cmのストライドで3時間00分の記録で走り通したとします。その歩数は26371歩になります。

では、同じ人がピッチを速め140cmにストライドを狭めて同じペースで走ったすると、その歩数は30139歩にもなります。

では、ピッチという観点で見てみましょう。前者の場合は146回/分で、後者の場合は167回/分となり、1分で21歩の違いが出てくるのです。3時間ちょうどは、4分16秒/kmペースですから、1kmで約90歩も違ってきます。

さあ、考えるのはここからです。

エコノミーの話ですから、消費エネルギーという観点で考えてみます。わかりやすくフルマラソンで4219.5kcal消費すると仮定して比べてみます。

所謂、1km=100kcal という計算なので、160cmのストライドの場合は、1歩で160cal、140cmのストライドの場合は、140calとなりますね。こういう計算が成り立つならば、(体力やエネルギー貯蔵量、筋繊維タイプなどを考慮しないとして)どんなストライドやピッチで走ろうが結果は同じになります。

問題は、このような計算にならないところです。ピッチを速めようとすると、振り子の原理に逆らい、慣性の法則を利用した走りが出来にくくなるために、余分な筋力を必要とします。脚を前に出そうとするほどに、上体は後ろに傾くように働き、重心も後ろに下がるので、エネルギーロスが多くなります。

また、無理矢理に脚を前に持っていくようなものですから、脚だけでなく、上体にも力が入ります。「力を入れる=エネルギーを余分に消費する」という事態になります。ですから、私は、「上下動を嫌い、ピッチ走法を意識」すればするほど、エネルギーを使うと思っています。

どうなるかというと、適当に数値を当てはめますが、ストライドが160cmの場合も140cmの場合も同じように、1歩で160cal消費するような結果になると考えています(レースのような速いペースの場合)。

つまり、全ての条件が同一と仮定して、160cmストライドの場合は、4219.5kcalを消費し、140cmストライドの場合は、4822.2kcalのエネルギーを消費するというわけです。600kcal も多く消費するので、マラソンの後半はエネルギー切れを起こしやすくなる状況が予想されます。

理想の話をすると、同じ力(エネルギー)を使って、ストライドが165cmに伸びたとするとどうなるでしょう。25572歩でマラソンを走破できることになります。ピッチが同じとすると、その結果、3時間ちょうどの記録から5分半近く短縮されることになります。

過去に、ピッチ走法で活躍したマラソンランナーは、日本には多いです。それは、豊富な練習量に裏付けされた相当な体力の持ち主だからできたことなのです。しかし、現在のようにマラソンの記録がレベルアップされると自然とストライドが伸びる走りができないと太刀打ちできない状況に陥るのは当然だと思います(無理にストライドを伸ばしても駄目)。

カネボウの高岡君がマラソンの日本記録を持っているのもうなずけます。彼は、大きなストライドのまま、ピッチを速めることをしないでマラソンを成功させたからです。世界のマラソンで猛威を振るうアフリカの選手に、ピッチ走法で走る選手は、ほとんど見かけません。先日の東京マラソンで優勝した選手が久しぶりに見るピッチ傾向の選手です(見た目の話)。

また別の観点で話すと、速く動かすほどに、速筋の利用頻度が高まります。結果、エネルギーをより消費することになるのは、説明するまでもないでしょう。ストライドが伸びれば、同じペースならば、ピッチが減らせます。その分、ゆっくり動かすことができますから、速筋の出番は少なくなるのもおわかりいただけるでしょう。

“無理なくストライドを伸ばす” ここがポイントです。

エボーリュで提唱(実践)しているマラソントレーニングは、ほとんどが、「フォームを改善すること」「楽にスピードが出せること」を目的に実施しているものばかりです。上体と下体の連動、カラダの屈曲と伸展、捻転動作、身体の乗り込み、などができるようにして、無理なくストライドを伸ばすことを目指しています。

フォームはなかなか変わらないのですが、それでも練習の成果は出始めて、会員さんがどんどん記録を伸ばしています。3万歩近くも刻む「一歩の消費エネルギーを少なくする」「筋肉を効率良く動かして筋疲労を軽減する」ことで記録を伸ばせることを実感していただいています。

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さらに、フォーム(動き)の重要性は、筋肉への負担率に差が出るからです。

「筋肉を効率良く動かす」とは、主導筋と拮抗筋の正しい動きと力の配分です。もっと詳しく言うならば、関節の「固定と解放」「屈曲と伸展」を繰り返すために、筋肉をコントロール(短縮・伸張・等尺性収縮と脱力)することです。

例えば、腰の動きが悪い場合、膝から下(下腿)が腰の代わりに回転や回旋をします。捻るわけですが、捻ったら戻さないといけませんから、無駄なエネルギーを使うことになります。腰が使うエネルギーを下腿が使っているから同じだろう、という指摘があるかもしれませんが(笑)、地面を真っ直ぐ押せないと無駄なエネルギーを使うのは、容易に想像がつくと思います。

腰周辺の筋肉は本来強いです。骨盤を正しく動かしてストライドを伸ばすだけで、相当な筋疲労軽減が図れます。マラソンを脚(足)だけで走ろうとすると非常に厳しいと思いますよ。

先日の日本学生ハーフマラソン選手権大会で、筑波大学の2人の選手が1分以上も自己記録を更新しました。12月初旬の日本体育大学記録会終了後は、基礎トレーニングに時間を費やしました。サーキットトレーニング、ウェイトトレーニング、速筋の鍛錬、動き重視のクロスカントリー走などを実施し、走り込みはあまりしていません。それでも長い距離で記録は伸ばせるのです。

常に動きを意識させていますが、完成はまだまだ先。大会の写真を見返しても、上体は反っている選手ばかりですから。「かなりの伸び代が残されている」と学生には話しています。練習量を増やすことだけが強くなることではないことを学ばせながら(もちろん、泥臭い走り込みも時期によっては必要です)、箱根駅伝出場に近づけていきます。やる気のある子が多いので、指導するのはとても楽しいです。

「エネルギー産生と消費」「運動器(筋肉・関節)」「フォーム(動き)」という要素がどう絡み合うかを解説してみました。何かを感じていただければ嬉しく思います。